Innocent_Mechanical Engineer

機械系エンジニアの雑記です

【書評】「日本の論点 2018~2019」 著:大前研一

年末年始の帰省の新幹線で,飛ばし飛ばしで読みました。

相変わらず大前研一さんの本は,読みやすくて頭にすっと内容が入ってきますね。事実と意見の区別がはっきりしているからだと思います。

色んな分野に関して書かれていますが,興味があって面白そうな分野だけ読みました。

1.原子力について 私はどちらかというと原子力の再稼働/新設に賛成だったのですが,大前研一さんは今の現状では,反対というより現実的に考えて,原子力の先細りは避けられないとの立場みたいです。 私が再稼働に賛成する理由は,原子力は稼働してなくても検査/維持に莫大なお金がかかるのと,CO2削減目標を達成するには原子力は不可欠だと考えているからです。もちろん,”安全”対策が実施され,"安全"が確認されることが大前提です。なお,新設に賛成する理由は,最新型の原発の方が安全である(と思う)のと,新設がないと若くて優秀な人材が原子力産業に集まらないと思うからです。 しかしながら,"安全"であることは証明できても,原発周辺住民などの"安心"を得られないから再稼働は無理という状況が続いています。新潟の柏崎原発しかり,四国の伊方原発しかりです(なお,本書では伊方はしばらく稼働できるであろうと書かれていますが,おそらく,高裁で運転差し止め判決が出る前に執筆されています)。本書にも少し説明されていますが,"安全"と"安心"は全く意味が違います。安全は,科学的に示すことができます(事故の確率は○○%など)が,安心は心理的な要素で客観的な評価はできません。いくら安全対策をしても,住民が安心できるような説明がされない限り,再稼働は難しいと本書で記述されています。そして,今だにフクシマの事故に関して,きちんとした説明が政府からなされていないとのことです。そして,その見込みもないから,国内における原子力は,廃炉事業のみ残るという論調でした。 原子力を専攻されて,原子力改革監視委員会を務められていた大前研一さんがそうおっしゃり,最近の伊方原発への高裁の判決を見る限り,実際,国内の原子力の新設なんて絶望的だと感じました。しかし,この本の結論にも記述されているように,廃炉事業をするにも原子力の技術は今後必要不可欠なのに,誰がお金を出して,どうやって人を集めるのだろうか...。外国の力を借りるのだろうか?

2. 南シナ海問題 南シナ海に関して,中国が領有権を主張する根拠となっている「九段線」は法的根拠なしと仲裁裁判で認定されています。実は,中国政府も法的根拠がないことは百も承知だが,単純に欧米諸国が今までやってきたこと(力がある国が他地域を領土化)しているだけとのことです。

3. 北朝鮮問題 北朝鮮問題に関しては,今後,可能性が高いのは金恩正が自滅するか暴走するかのことです。自滅は,恐怖政治がいき過ぎて,金恩正が暗殺されるパターンのことです。暴走は,言葉通り,金恩正がにっちもさっちもいかなくなって,他国を攻撃することです。なお,攻撃される可能性が一番高いのは韓国みたいです(確実に攻撃できるから)。なお,日本が直接できることはほとんどないみたいです...。 恐ろしいですね...。暴走のパターンだけは避けて欲しいのですが...。

最近の時事を,大前研一さんの意見付きでまとまって読めたので有意義でした。多角的な視点でものごとを見るのが重要だと感じました!