Innocent_Mechanical Engineer

機械系エンジニアの雑記です

特徴量の自動獲得がイノベーション! / 「人工知能は人間を超えるか 」著:松尾 豊

人工知能の研究で恐らく,日本で一番有名な松尾先生による本です。実は,30日に松尾先生のご講演があるので,聞きにいきます! 最近,人工知能やAIという言葉は毎日のようにニュースになっていますが,人工知能とは一体何なのか / 何がすごいのか / 限界はどこにあるのかは,この本を1冊読めば大体理解できます。 そして,さすが研究者らしく,参考文献もしっかり記載されていて,こんな本を将来書けるようになりたいなと思いました。

人工知能はなぜこんなに騒がれるの?

「人間の知能は,原理的にはすべてコンピュータで実現できるはずだ」というのが,科学的には妥当な予想である。そして,人工知能はもともと,その実現を目指している分野なのである。

人工知能は一つの研究/学問の分野に過ぎないと思うのですが,なぜ,これほどまでに話題を集めるのでしょうか?例えば,私が専攻していた機械工学科における数値流体力学は,未知な流体現象を解明してそれを数式で実現をしようとする学問と言っても良いと思います。そして,必要な数学/数式の知識とプログラミング技術は,恐らく人工知能に必要なそれとそれほど差はないと思います。数値流体力学のある分野の有名な若い先生と親しくさせてもらっていますが,本当に先生の数学の理解力とプログラミング技術は半端ではないです。対象とする分野が違うだけで,人工知能が特別凄い学問(分野)だとは思わないのですが,なぜこんなに人工知能だけ騒がれるのでしょうか...?個人的には,人工知能をこんなに取り上げるならば,他の学問や技術ももっと取り上げて欲しい。それはさておき,すぐに思い浮かぶ理由は,人工知能は応用分野が広いからということです。でも,この本を読んでわかったのは,人工知能の分野において,イノベーションが起きたからというのも一つの理由です。

特徴量の自動獲得

ディープラーニングに代表される,特徴表現をコンピュータが自動的に獲得できるようになったことが大きなイノベーションのようです。どういうことかというと,1~10までの数字をコンピュータに学習させる場合,人間が概念(1は真っすぐな棒,10は2つの数字に別れているなど)を教え込まないといけなかった。しかし,ディープラーニングでは,大量の手書きの1~10の画像を読み込んで,コンピュータ自らが相関のあるものをひとまとまりにして特徴量を取り出し,1とか10の概念を獲得することができます。まあ,この辺の説明は,実際に本を読んでもらった方が圧倒的にわかりやすいと思います。

これによって,私が思うに,ある結果に対して,人間が思いもしないことが原因だったということが見つけられるようになるのではないかと思います。工場での製造不良をいくら原因究明して対策しても改善できなかったが,人工知能を使って調べてみたら,実は工場の外を走っている新幹線の振動が原因だったという話を聞いたことがあります。機械工学の分野でも,実現象に対して,想定できる物理現象をモデル化して解きますが,実現象と結果が異なる場合,人工知能を使えば,思わぬ発見があるかもしれないですね。

人工知能の専門家でなくても,人工知能の活用はどんな仕事でも今後必須になると感じた本でした。そして,人工知能を組み合わせて仕事を効率化,付加価値を付けられる人材が市場価値の高い人材になりそうです。そのためには,基礎的な数学の知識とプログラミング技術が必須です。私も機械工学と人工知能を組み合わせて社会をよくしていけるように日々努力します!